グローバルCDN採用してストレスないUXを世界に届けたい

富士フイルムホールディングスといえば、多岐にわたるビジネスを展開するグローバル企業です。

医療機器や化粧品などのヘルスケア分野から、ケミカルを中心とした高機能材料を取り扱うマテリアル分野、写真プリントやデジタルカメラなどのイメージング分野、さらに商業印刷機器・システムや富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(2021年4月に富士ゼロックスから社名変更)によるオフィス複合機・ソリューションサービスなど、幅広くグローバルで展開しています。

今回ご紹介するのは富士フイルムのグラフィックコミュニケーション事業(印刷関連事業)のグローバルサイト( https://believinginprint.fujifilm.com/ )です。本サイトにおいて、世界均質の表示スピードが得られるために、Cloudflareが採用導入されました。

同サイトでは、2021年6月から8月の期間限定で、「BELIEVING IN PRINT FUJIFILM Virtual Exhibit 2021」と題したバーチャル展示会コンテンツが公開されました。このサイトは、同グループの印刷領域におけるグループ全体のビジネス展開を世界各国に対して情報提供することを目的しています。世界中のどこにいても、いつでも参加できる展示会を、3Dバーチャル技術と動画を活用したリッチコンテンツで、新しいユーザー体験を「快適」に提供するため、グローバルCDNが不可欠だったといいます。選ばれたのがセキュリティ&高速化のCloudflareです。

施策評価をフラットに行うには、表示遅延は避けなければならない

Cloudflareの導入の経緯を、富士フイルムビジネスエキスパート(株)のウェブサイト インフラ担当氏(以下FFBXインフラ担当氏)に尋ねてみました。同社は、富士フイルムグループの事業会社・販売会社のウェブサイトの構築・運用、デジタルマーケティングなどの活動支援を行っています。

「今回の企画では、3Dバーチャルショールームやセミナー動画などのリッチコンテンツをグローバルに配信することが求められました」。

リッチコンテンツのグローバル配信は同社・同グループとしても初めての試みだったといいます。過去のグローバルサイトの運営経験から、何も手を打たなければ、表示スピードの遅延は確実に起こると予想されていたようです。

 企画自体も初めての取り組みだったため、表示スピードの遅延で訪問者の離脱を招くことは、施策の成否を判断する上でも避ける必要があったといいます。訪問者が多くても回遊していないのであれば、企画・コンテンツが評価されなかったのか、表示速度が遅くて待ちきれずに離脱したのかは判断つかないと言います。

「表示スピードは、世界中どこでアクセスしても同程度であることが望ましいのは間違いありません。多くの社内外関係者と議論を重ねて作った各種コンテンツの価値を最大化するためにも、グローバルCDNの利用を必要条件としてインフラを準備しました」

世界は遠い。だから遅延が発生する。

いまから30年前、WEBサイトは、世界中に届けられる情報メディアとして注目されてきました。しかし、各拠点、エリアにおいて均質な表示スピードが得られているかというと、そうでもありません。特別な対策を施さないとばらつきが生じてしまうのです。

グローバル展開をする企業にとって、サービスの均質化、クレームない閲覧、これらは企業イメージ、プロダクトのブランディングのためには欠かせません。しかし、多くのこうした対策は「遅い、開かない」などのクレームによって改善されるのではないでしょうか?

FFBXインフラ担当氏は次のように言います 「いくらコンテンツが充実して、かっこよく見せたところで、表示が遅くて見てもらえない人々がいたのでは意味がありません。ファイル転送時間がネックとなった直帰の誘因や、回遊中の不満を持たれることは、前提として避けたいと考えていました。」

なぜグローバルCDNが必要か?

理解を進めるために、なぜ遅延(レイテンシー)が発生するかを解説します。

距離による遅延原因をカンタンに説明します。そもそも地球の半周は約2万キロです。環境にもよりますが、東京ーNYでもWEBサイトでは平気で、2~3秒の遅延が起こってしまいます。

この原因は、RTT(Round Trip Time:信号の往復に要する時間)が原因だったり、RT(Round Trip)数 RTTの往復回数が原因だったりします。WEBの構造特性から、WEBには画像やCSSなどいろんなリクエストがあり、このやりと回数が大きな遅延を起こします。またTCPの冗長なやりとりもそもそもの原因だったりします。

さらに閲覧環境によっても遅延がおこります。デバイスがモバイルだったり、通信環境でもまだまだ2Gや3Gの遅い回線エリアも存在します。こうした様々な原因による遅延対策として、最も簡単な解決方法が、「各拠点にもっとも近い場所にサーバーの役割を果たす、グローバルCDN」の利用です。

もちろん、これ以外の方法においても高速化対策が測れますが、改修の手間や対応時間、コストを考えると、もっとも手軽な方法が「グローバルCDN」を利用するということになります。

クラウドフレアのグローバルCDNの優れた点

FFBXインフラ担当氏が続けます。

「様々な環境を検討した結果、サーバーは日本のデータセンターで構築することにしましたが、サーバー自体が日本にあることから、海外、特に欧米諸国への情報提供には物理的距離の問題で表示速度の点から適していない環境であることは採用時からわかっていました。」

採用いただいたCloudflareだが、他のCDNに比べてどの点が違うのでしょうか? Cloudflareは、2010年に誕生した新しいコンセプトのセキュリティ&CDNです。ひと昔前のCDNと比べて、新しいコンセプトと新しい技術で開発が続けられています。

高速化の特徴として、Argo Smart Routingを利用しながら、ネットワーク上のコンテンツリクエストを最速パスにすることや、複数のオリジン間でトラフィックの負荷分散を可能とする点、またキャッシュ方法を細かく制御可能できるカスタマイズ性の高さも特徴です。さらに配信元への要求が減らすことで、帯域幅消費量が最小化されます。またHTTP/3へのサポートを取り入れたり、中国大陸へのチャイナ CDNも拡充を続けています。

新しい技術プラットフォームへのチャレンジ

FFBXインフラ担当氏は言います。

「今回のバーチャル展示会の企画は期間限定のものでしたが、訪問者のコンテンツ利用状況はグローバルCDNのおかけでフラットに評価できるようになりました。この履歴情報を分析して、新たに事業の展開を驚きとともに、わかりやすく、スピーディーに世界中の方に提供できるよう計画していきたいと考えています。」

同社の常にお客さまへ最大価値を提供したい、という姿勢には脱帽しました。私たち、(株)ドーモも、今後はさらに表示スピードを細部で改善することや、Googleのコアウエブバイタルの指標に対してもよりよい効果をアドバイスさせていただきたいと思います。


富士フイルムビジネスエキスパート株式会社

富士フイルムビジネスエキスパートはシェアードサービス会社として、富士フイルムグループが高い市場競争力・技術力を発揮し続けること、そしてグループの売上・利益最大化、経営基盤強化に貢献すべく、「総務」「ファシリティ」「人事」「保険」「購買」「マーケティング」「研究開発支援」「経理」の8つの事業領域で、専門力、現場力、業務遂行力を生かした「業務プロセス改革」「付加価値の創出」を行っています。富士フイルムグループのダイナミックな事業構造の転換、また、ビジネス環境やICT活用などを含めた市場の変化、そしてガバナンス強化などへの要請、課題をとらえ、富士フイルムグループに貢献しています。
文・占部雅一