株式会社NEWSYが運営する「Sirabee(しらべぇ)」は、月間1億ページビューを超えるメディアサイト。
2014年に設立され、調査データや取材を元に、最新ニュース、芸能の話題、注目の店、新商品などを紹介するウェブメディアです。
同サイトの特筆は、開設10年も立たない間に、巨大なトラフィックを作りあげている点です。
一方で、近年のトラフィックと広告収益増がありました。Web表示スピードの高速化と広告売上向上策を 同社のCTO田村啓(たむら・けい)氏(49歳)に伺いました。


kusanagi ベースのWordpressで動くしらべぇのサイト。以前から速かったがさらに高速化を実現!

メディアサイト各社では、数多のトラフィック流入施策を通じて、PVを増やすことに奔走しています。ニュースサイトのSirabeeでは、そのPV増策の1つとして「Web表示スピードの重要さ」を認識していました。これまでも表示スピードの向上に加えて、コアウェブバイタル各スコアのオールグリーン(良好)化を続けています。

広告売上向上のためにWeb高速化を!

Web表示スピードの高速化というのは、ユーザーのUXがよくなるということを目指しての対策でしょうか?

「それもそうですが、スピードは広告売上げに直結した問題解決だからです。当たり前のことですが、ページを高速化させることで広告のインプレッション数は上がります。効率が良くなるわけですから、同時に広告とPVが正比例して上がります。自ずとこの2つが上がれば、広告収益が上がってくるというわけです」

こうした理由から、Sirabeeでは、設立当初よりWebサイトの内部構造を含めた数々の対策を行ってきました。例えば、画像の軽量化からブロッキングを起こしているJavascriptなどの調整などです。

「html、css 、Javascript などの調整など、フロントエンドの最適化はとことん行ってきました。しかし、今までのやり方では限界だ、これ以上改善余地はない、ということから新しいCDNの導入を検討し、それがCloudflareでした」(田村氏)

田村 啓(たむらけい)
Sirabeeを運営する株式会社NEWSYのCTO。Cloudflareのどんどん進化するサービスとドーモのサポート品質に満足しています。

Google Discvoverにしっかり露出させる

高速化の効果では、自社サイトのSEOランクの向上目的もありますが、最大の狙いは、Google Discvoverにしっかり露出させることだと田村氏は言います。Androidの画面で左に、フリップすると表示されるスクロールしながら読むニュース記事です。
Google Discover に掲載されることで、爆発的なPVを獲得できます。Google Discoverは、Googleが勝手に選んで表示されるのですが、その露出される条件の一つが表示スピードです。どんなに評価の高い記事であっても、その表示が遅ければGoogle は評価してくれない、と考えています。」
Sirabeeを訪問するアクセスデバイスの95%は、スマホからだそうで、スマホでのWebの露出がとにかく重要になってくるわけです。
田村氏は、Cloudflareの性能、サービスの内容、料金など、ある程度興味理解はあったものの、実装ノウハウなどが不足していたと言います。
「今までやってきたWebページの内部施策、サーバやCDNのチューニングでは、限界が見えてきたので、Cloudflareを検討しました。以前のCDNでは、サポートが弱かったり、マニュアルが英語だったり、オブジェクトストレージのサービスの提供がないことが不満でした。」

タップして描画が始まるStartRenderは0.6秒。そして特筆は1.6秒で表示が完了されること。通常は後ろにもっと引っ張られて、完了まで15程度かかるサイトは少なくありません。

表示速度だけでなく、コストも大幅に削減できた

Cloudflare 採用した理由として、下記の3つがポイントだったと、田村氏はいいます。

  1. CDNの性能、機能として優れていること 
  2. エグレス料金の課金が無い、全般的にAWS / Google と比較してコスト優位性があること
  3. オブジェクトストレージ(R2)をオリジンサーバとして設定、WordPress(サーバ)→R2(オリジン)→CDN とスムーズな連携が取れること。

2023年3月にクラウドフレアを実装し、4月にかけてCDNのキャッシュ率を上げるチューニングが行われ、結果、広告売上げは2022年6月に比べて約20%アップしたといいます。

それでは、具体的な改善の数値をみていきましょう。

Cloudflareによる各指標の減少

Backendの数値は大幅に向上。LCP、FID(TBT)、TTIの各数値ともによくなっています。Backendは、大幅向上ですが、実に マイナス1秒。1.3秒程度が 0,32秒ともなっています。これはCloudflareの世界最速のDNSによる効果です。

CloudflareによるTBTスコアの減少

CloudflareでFIDがグリーンになった!

また特筆は、Cloudflare導入でFIDのスコアが向上したこともニュースです。「FID(TBT)は、以前はいくらやってもオレンジ(要改善)だったものが、いきなりグリーンになりました。このグリーン化により、SirabeeのGoogle Discoverでのヒット率を上げているのだと思われます。このインパクトは大きいです」(田村氏)
従来、FID対策の基本メソッドは、JSやCSSのブロッキング要素をきれいにすることでした。Sirabeeでは、ブロッキング要素の内部要素の整理が終わっていたので、Cloudflareで一気にグリーン(良好)に変わったというわけです。「また、アクセス数の増減に関係なくWeb表示が安定して速くなったのがCloudflare導入効果だとも言えますね」と田村氏はいいます。

※実際にCoreWebVitals(iphone)を計測、LCPがグリーン(良好)である状況が確認できます。

フルキャッシュサイトにしたい!

Sirabeeでは、CDNのキャッシュ率にも注視しています。 これはWEBページの主要構成要素をオリジンサーバーに置くのではなく、CDN側に置いて「キャシュでリクエストを処理させる」比率をあげていくという手法です。「現在、img、css、htmlのキャッシュヒット率は約93%。記事更新のRSSフィード以外はほぼCDNキャツシュ処理できているのですが、RSSフィードもCDNから対応できる仕組みにして、フルキャッシュ状態(95%以上)を実現したい」(岡村氏)

Cloudflareで大幅コストダウンを目指す!

結果、CDNを使うということは、高速化とともに「オリジンサーバーの負荷を軽減させる」という目的があります。いままで100%あったオリジンのトラフィックが、90%以上CDNでリクエストを処理することになり、オリジンは残り10%のトラフィックを処理できればいい。つまり、インフラコストの大幅な削減が期待できます。Sirabee の場合、以前がサーバーとCDNで月額60万円ほど払っていたコストがCloudflareに乗り換えた途端に、サーバーとCDNで30万円に抑えるといいます。実に月額30万円ものコスト削減です。Cloudflare導入とキャッシュ率の向上は、実は、追加費用ではなく、コストダウン策だということが大きなメリットとなりました。


エグレス料金が発生しないR2に感激!

さらに、Sirabeeではオブジェクトストレージに、CloudflareのR2を導入しています。R2はAWSのS3に比べて、エグレス料金が発生しません。

「R2でディスクの容量を大幅にスケールアップできた。しかも、CloudflareのR2は安い。メディアにとって、エグレス料金が発生しないのはうれしいです」(田村氏)

一般的に、特定のクラウドサービスから外部のインフラにデータを移動させると外部通信の「エグレス料金が掛かるケース」が多いのです。これが意外と予定外の追加費用になりネックとなります。その点CloudflareのR2はエグレス料金の課金がなく、一定の利用費用のみでコストコントロールできることがメリットだといいます。

まとめ

Cloudflareは、Sirabee の高速化に大きく貢献しました。そして広告売上げの向上にも効果を発揮します。またキャッシュヒット率をあげることができ、その効果として、オリジンサーバーのトラフィックを減らし、大幅にサーバーコストを下げることができます。メディアサイトは、ぜひこの点に注目いただき、高速化、売上げ向上、大幅コストダウン策として、Cloudflareの導入を考えてみてください。

田村 啓(たむらけい)
株式会社NEWSY CTO / 株式会社しくみラボ 代表取締役

プロフィール
1999年に起業。以後アフィリエイト広告会社 COO などを経て2008年しくみラボ設立。2015年よりSirabee のシステム責任者を兼任。